大判例

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東京高等裁判所 昭和27年(う)321号 判決

所論の要領は原判決が被告人が預つた旅行者用主用食糧購入通帳を以て被告人のため自由に配給を受けてよいと言われたと説示しているのは即ち被告人が主要食糧の配給を受領するについての代理権限を有していたものと認められるに拘らず、原判決は右判示に引き続いて「被告人は右通帳名義人の代理人でなく」云々と判示したのは理由の不備乃至理由のくいちがいがあると主張するものである。

しかし、原判決が判示したのは、所論のように単純に預つた主要食糧購入通帳で自由に配給を受けてよいと云われたと認定したものでなく、被告人が通称めがね、山本某及びめがねの友人というだけで住所氏名の判らない人物に金を貸し、その担保として右購入通帳を預つた事実を併せ判示していること明らかである。然るに本件主要食糧の配給制度は不足している主要食糧を一定の計画に従い、各人に平等に配分しようとするものであるから、何人と雖も第三者の名前を使つたりして二重に配給を受けることが許されないのであり、その反面、自己の主要食糧購入通帳を第三者に譲渡することは、その譲渡を受けた第三者をして二重に配給を受けさせることとなるので、法はこの購入通帳を他人に譲渡したり、又は他人より之を譲り受けることができないと定められているのである。(食糧管理法第八条の五参照)してみれば前記のように貸金の担保として購入通帳を占有するような所為は、法律が譲渡譲受を禁止したものについて担保権を設定することであり無効のものといわなければならないのみならず、たとえ右担保権設定に当つて自由に配給を受けてよいと云われており、これが所論のように配給を受領する代理権を与えられたというに該当するとしても、かかる無効の担保設定に附随する配給受領の代理権授与行為それ自体が無効のものとしなければならない。もしそうでないとすれば、所論にいわゆる代理権を与えられた者はその占有する他人名義の主要食糧購入通帳によつて、正当な自己の受けとることのできる配給以外に第三者のための配給をも受領し得ることとなり、ここに二重に配給を受ける危険があり、法が前記のように購入通帳の譲渡を禁止した法意を没却するに至るからである。

してみれば、担保として預つた購入通帳によつて通帳名義人の代理名義を冒用し通帳名義人本人又はその代理人であると欺罔して主要食糧を購入するが如き行為は詐欺罪を構成するものであり、原判決が自由に配給をとつてよいと云われていたことを奇貸とし、通帳名義人の正当な代理人でなく………同通帳を提出して正当な代理人であると誤信させ外食券甲を受配名下に交付させて騙取し云々と判示したことは正当であつて所論のように理由不備乃至理由のくいちがいがあるとは認められない。

所論は被告人に代理人としての正当権限の行使が許されているとの前提に立つのであるが独自の見解であつて採用できない。

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